ペットにもCBD?犬や猫とCBDの基本を知ろう

実は、犬や猫の身体にも「カンナビノイド」に関わる仕組みが備わっています。

大麻草由来のCBDなどが犬や猫の身体にも作用する背景にあるのが、ECS(エンド・カンナビノイド・システム)です。

ECSは人間だけのものではなく、犬や猫をはじめとする動物にも存在し、神経系や免疫系、消化管など、身体のさまざまな場所に関わっています。

では、動物の身体ではどのようにカンナビノイドが働いているのでしょうか。

今回は、犬や猫のECSについて、実際にどのようなことがわかっているのか。そして、なぜCBDをはじめとする植物性カンナビノイドが動物にも作用するのかを、研究をもとに見ていきます。

犬や猫の身体にも「カンナビノイド」がある

ECSとは、Endocannabinoid Systemの略で、日本語では「内因性カンナビノイドシステム」と呼ばれます。

この仕組みを知るうえで、まず押さえておきたいのが、動物の身体もカンナビノイドをつくっているということです。

人や犬、猫などの身体では、

アナンダミド(AEA)
2-AG(2-アラキドノイルグリセロール)

といった物質がつくられています。

これらは体内でつくられることから、エンドカンナビノイド(内因性カンナビノイド)と呼ばれます。

さらに身体には、エンドカンナビノイドからの情報を受け取るCB1・CB2などの受容体や、それらを合成・分解する酵素があります。

こうした一連の仕組みがECSです。

ECSは神経系や免疫系をはじめ、消化管や皮膚などさまざまな組織に存在し、身体の情報伝達や調節に関わっています。

2024年に発表された獣医学分野のレビューでも、犬、猫、馬など複数の動物種について、ECSやカンナビノイド受容体の分布、植物性カンナビノイドとの関係がまとめられています。

犬の消化管で見つかった「2-AG」

ECSの研究が進むきっかけのひとつとなったのが、体内でつくられるカンナビノイドの発見です。

1992年には、内因性カンナビノイドのひとつである「アナンダミド」が発見されました。

その後、研究者たちは身体の中にほかにもカンナビノイド受容体に作用する物質が存在するのではないかと研究を進めていきます。

その中で1995年、犬の消化管に含まれる脂質成分を詳しく分析した研究から、2-AG(2-アラキドノイルグリセロール)が同定されました。

研究では、質量分析などを用いてその化学構造が確認され、さらに2-AGがカンナビノイド受容体であるCB1とCB2に結合することも確かめられました。

2-AGはその後、アナンダミドと並ぶ代表的なエンドカンナビノイドのひとつとして知られるようになります。

この発見によって、犬の身体にはカンナビノイドを受け取る受容体だけではなく、その受容体に働きかける物質も存在していることが示されました。

さらに犬の消化管では、その後の研究でCB1、CB2のほか、GPR55やPPARαなど、カンナビノイドとの関係が研究されている複数の受容体が確認されています。

それらは腸の上皮細胞や免疫細胞、血管、平滑筋、腸管神経系など、さまざまな場所に分布していました。

消化管におけるECSは、腸の運動や分泌、神経伝達、免疫反応などとの関係が研究されています。

犬の脳や神経にもCB1受容体がある

CB1は、ECSを構成する代表的なカンナビノイド受容体のひとつです。

健康な犬の神経系を調べた研究では、大脳皮質、海馬、中脳、小脳、延髄、脊髄など、広い範囲でCB1受容体が確認されています。

さらに末梢神経や後根神経節などでもCB1受容体が確認されており、犬の神経系に広く分布していることが示されています。

神経系におけるECSは、神経細胞同士の情報伝達を調節する仕組みのひとつとして研究されています。

また、犬の脳脊髄液を調べた研究では、アナンダミドなどのエンドカンナビノイドが実際に測定されています。

特発性てんかんの犬40頭と健康な犬16頭を比較した研究では、脳脊髄液中のアナンダミド濃度に違いがみられ、発作の重症度や期間との関連も報告されました。

こうした研究から、犬のECSは神経系の中でも実際に働いている生理的な仕組みとして研究されています。

関節でも確認されるエンドカンナビノイド

ECSに関わる物質は、神経や消化管だけで確認されているわけではありません。

変形性関節症の犬を対象とした研究では、関節液の中からアナンダミドや2-AGなどが検出されています。

さらに、変形性関節症のある膝と反対側の関節を比較すると、変形性関節症のある関節では、反対側の関節と比べて2-AGの濃度が有意に高いことが報告されました。

このように、犬の身体では神経系、消化管、関節など、さまざまな場所でECSに関わる受容体やエンドカンナビノイドが確認されています。

それぞれの組織でどのような役割を担っているのかについて、現在も研究が進められています。

猫の身体にもECSはある?

猫の身体にもECSがあります。

猫の消化管を調べた研究では、CB1、CB2、GPR55、PPARα、TRPA1など、カンナビノイドやECSとの関連が研究されている複数の受容体が確認されています。

CB1は胃の上皮細胞や腸の内分泌細胞、腸管神経などに、CB2は腸の上皮細胞やマクロファージなどに分布していました。

つまり猫の身体にも、カンナビノイドが関わる情報伝達の仕組みが存在しています。

現在では、猫についてもCBDを与えた際の吸収や血中濃度、代謝などを調べる研究が行われています。

犬と比べると猫を対象とした研究はまだ多くありませんが、近年では猫とECS、そしてフィトカンナビノイドとの関係についての研究も少しずつ広がっています。

なぜ植物のカンナビノイドが動物に作用するの?

ここまで見てきたように、人や犬、猫の身体には、

・アナンダミドや2-AGなどのエンドカンナビノイド
・CB1、CB2などの受容体
・エンドカンナビノイドを合成・分解する酵素

などから構成されるECSがあります。

一方、大麻草がつくるCBDは、植物由来であることからフィトカンナビノイド(植物性カンナビノイド)と呼ばれます。

CBDは、動物の身体にもともと備わっているECSや、それに関連するさまざまな受容体、酵素、イオンチャネルとの相互作用が研究されています。

CBDの作用は、ひとつの受容体だけで説明できるものではなく、複数の経路を通じて身体の調節機能に関わると考えられています。

植物由来のCBDと動物の身体との関係を理解するうえで、ECSは重要な鍵のひとつとなっています。

「植物の成分」と「動物の身体」をつないでいるECS

犬や猫におけるECSの研究から、カンナビノイドに関わる受容体やエンドカンナビノイドが、神経系や消化管、関節など、さまざまな場所に存在していることがわかってきました。

こうした研究の積み重ねによって獣医学の分野でもECSへの理解が進み、CBDをはじめとするフィトカンナビノイドが動物の身体にどのように関わるのかについて研究が広がっています。

現在では、犬の関節やてんかん、猫の炎症性疾患など、より具体的なテーマを対象とした臨床研究も行われています。

次回からは、こうした犬や猫を対象としたCBD研究について、実際の論文をもとに詳しく見ていきます。


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