犬の関節とCBD ― 変形性関節症ではどんな研究が行われている?

前回の記事では、犬や猫の身体にもECS(エンド・カンナビノイド・システム)が存在し、神経や消化管、関節など、さまざまな場所で研究されていることをご紹介しました。

今回はその中から、犬の関節とCBDについて見ていきます。

犬を対象としたCBD研究の中でも、臨床研究が比較的多く行われているテーマのひとつが「変形性関節症(OA)」です。

今回は、これまでに行われた研究の中から、CBDを使用した犬で痛みや活動性、生活の質などに改善が報告された3つの臨床研究を紹介します。

犬の変形性関節症とは?

変形性関節症は、関節軟骨やその周囲の組織に変化が起こり、慢性的な痛みや動きにくさにつながる疾患です。

立ち上がるまでに時間がかかる、散歩を嫌がるようになる、階段を避ける、以前より活動量が減るなど、日常生活の変化として現れることもあります。

こうした変形性関節症を持つ犬について、CBDを使用したときに痛みや活動性がどのように変化するのか、いくつかの臨床研究が行われています。

2018年、CBDを含むヘンプ抽出物を使った研究

2018年、コーネル大学の研究グループから、変形性関節症の犬を対象とした臨床研究が発表されました。

変形性関節症が確認された犬22頭が登録され、そのうち試験を完了した16頭が解析対象となりました。

研究では、同じ犬がCBDオイルとプラセボの両方を使用するクロスオーバー試験が行われ、CBDは体重1kgあたり2mgを12時間ごとに4週間使用しました。

飼い主と獣医師の双方が、CBDとプラセボのどちらを使用しているかわからない状態で評価しています。

その結果、CBD使用期間では、2週目と4週目に飼い主が評価した痛みの低下と活動性の改善が確認され、獣医師による痛みの評価でも改善が報告されました。

この研究で使われたオイルの中身にも注目してみましょう。

使用されたのはCBDだけを単離したものではなく、CBDを主成分とするヘンプ由来の抽出物です。

オリーブオイルをベースに、CBDとCBDaを中心として、THC 0.24mg/mL、CBC 0.27mg/mL、CBG 0.11mg/mLが含まれ、その他のカンナビノイドは0.01mg/mL未満でした。後のシステマティックレビューでは、この製剤はフルスペクトラムCBDオイルとして分類されています。

つまり、この研究はCBD単体ではなく、複数のカンナビノイドを含むヘンプ抽出物を使用した研究です。

99.9%のCBDアイソレートを使った研究

2020年には、変形性関節症の大型犬20頭を対象とした無作為化二重盲検プラセボ対照試験が発表されました。

犬は5頭ずつ、

・プラセボ
・通常のCBD 20mg/日
・通常のCBD 50mg/日
・リポソーム化CBD 20mg/日

の4群に分けられ、4週間観察されました。

この研究で使用されたCBDは、先ほどの研究とは大きく異なります。

使用されたのは純度99.9%のCBDアイソレートで、第三者機関による分析ではTHCやその他のカンナビノイドは検出されていません。

通常のCBDは分画ココナッツオイルに溶かされ、リポソーム化CBDにはヒマワリ由来のレシチンが使われました。

研究の結果、通常のCBD 50mg/日とリポソーム化CBD 20mg/日のグループでは、痛みの低下と運動性の改善が確認されました。一方、通常のCBD 20mg/日では同じような改善は確認されませんでした。

この研究では、同じCBDアイソレートでも、使用量や剤形によって結果に違いがみられました。
また、他の犬の変形性関節症研究では複数のカンナビノイドを含む製剤も使用されているため、CBDの量だけでなく、製剤に含まれる成分や剤形、投与方法などの違いが研究結果にどのように影響するのかも、今後さらに検討が必要です。

通常の疼痛治療にCBDオイルを追加した研究

同じ2020年には、自然発症の変形性関節症を持つ犬21頭を対象とした研究も発表されています。

すべての犬が抗炎症薬、ガバペンチン、アミトリプチリンによる疼痛治療を受け、そのうち9頭にはCBD 2mg/kgを12時間ごとに追加しました。残りの12頭にはCBDを追加せず、12週間経過を観察しています。

CBDを追加したグループでは、痛みの強さを示す「Pain Severity Score」が1、2、4週目に対照群より有意に低くなりました。

また、痛みが日常生活に与える影響を評価する「Pain Interference Score」も1、2、12週目に有意に低く、1週目には生活の質(QOL)の評価でも改善が報告されています。

この研究で使われたものは、認可された薬局で調製されたCBDを主成分とするオイル製剤です。

CBD濃度は犬の体重に応じて調整され、CBD以外のカンナビノイドはいずれも0.01mg/mL未満の微量と記載されています。基剤にはMCTオイルが使用されました。

原著論文では「CBDアイソレート」「ブロードスペクトラム」とは明記されていないため、そのようには分類せず、CBDを主成分とし、その他のカンナビノイドをごく微量含む製剤と捉えるのが適切です。

同じ「CBDオイル」でも条件は同じではない

今回紹介した3つの研究では、いずれも犬の変形性関節症に伴う痛みや活動性、生活の質などに改善が報告されています。

使用された製剤を見てみると、その内容はそれぞれ異なります。

2018年の研究では、CBDやCBDaに加えて複数のカンナビノイドを含むヘンプ抽出物。

2020年のVerricoらの研究では、THCやその他のカンナビノイドを含まない99.9%のCBDアイソレート。

Brioschiらの研究では、CBDを主成分とし、その他のカンナビノイドをごく微量含むMCTオイル製剤が使用されました。

さらに、通常のオイルとリポソーム製剤、経口投与と口腔粘膜への投与、CBDの量や使用期間、ほかの鎮痛治療との組み合わせなど、研究条件にも違いがあります。

こうした違いがありながら、複数の臨床研究で痛みの低下、活動性の改善、日常生活への影響の軽減、QOLの改善といった変化が報告されていることは、犬の変形性関節症とCBDを考えるうえで興味深い点です。

また、同じCBDでも使用量や剤形によって結果に違いがみられた研究があることから、今後は「CBDを使うかどうか」だけではなく、どのような成分構成の製剤を、どのような剤形や条件で使用するのかについても研究が進むことで、より詳しいことが見えてくると考えられます。

犬の変形性関節症は、CBDの獣医療研究の中でも比較的臨床データが積み重なってきている分野です。

これから研究対象となる犬の数が増え、製剤の違いや使用条件についても整理されていくことで、犬の慢性的な関節痛に対してCBDをどのように活用できるのか、さらに具体的な知見が蓄積されていくことが期待されます。

なお、記事中に記載したCBD量は、すべて各臨床研究で設定された量であり、市販されているCBD製品の使用量を示すものではありません。

参考文献

[1] Gamble LJ, et al.
Pharmacokinetics, Safety, and Clinical Efficacy of Cannabidiol Treatment in Osteoarthritic Dogs.
Frontiers in Veterinary Science. 2018;5:165.
DOI: 10.3389/fvets.2018.00165. PMID: 30083539.
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DOI: 10.1097/j.pain.0000000000001896. PMID: 32345916.
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[3] Brioschi FA, et al.
Oral Transmucosal Cannabidiol Oil Formulation as Part of a Multimodal Analgesic Regimen: Effects on Pain Relief and Quality of Life Improvement in Dogs Affected by Spontaneous Osteoarthritis.
Animals. 2020;10(9):1505.
DOI: 10.3390/ani10091505. PMID: 32858828.
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[4] Patikorn C, et al.
Efficacy and safety of cannabidiol for the treatment of canine osteoarthritis: a systematic review and meta-analysis of animal intervention studies.
Frontiers in Veterinary Science. 2023;10:1248417.
DOI: 10.3389/fvets.2023.1248417. PMID: 37781283.
PubMed | 全文

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