CBDと不安 ― 心配や緊張にCBDはどう関わる?

私たちは日々、さまざまな場面で不安や緊張を感じます。

大切な予定を前にそわそわしたり、人前で話すときに心拍が速くなったり、まだ起きていないことを何度も考えてしまったり。不安は、私たちの心と体に備わっている自然な反応のひとつです。

一方で、不安が強くなったり長く続いたりすると、気持ちだけでなく、睡眠や集中力、日々の過ごし方にも影響することがあります。

CBDについては以前から、こうした不安や緊張、恐怖に関係する反応との関わりが研究されてきました。

人前で話すときの緊張を調べた研究や、数週間にわたってCBDを使用した研究、さらに100人を超える参加者を対象とした臨床試験まで、ヒトを対象にした研究も少しずつ増えています。

では、CBDと不安の関係について、現在どのようなことが分かっているのでしょうか。

不安を感じるとき、体では何が起きている?

不安を感じると、「気持ち」の変化だけではなく、体にもさまざまな反応が現れます。

心拍が速くなる、呼吸が浅くなる、筋肉に力が入る、汗をかく。こうした反応は、危険やストレスに備えるための仕組みの一部です。

不安や恐怖に関係する脳内の仕組みには、セロトニンなどの神経伝達系や、ECS(エンドカンナビノイドシステム)を含むさまざまな経路が関わっています。

CBDについても、5-HT1A受容体、ECSに関連する経路、TRPV1など複数の標的との関係が研究されています。特に5-HT1A受容体は不安反応との関係が研究されているセロトニン受容体のひとつで、CBDがそのシグナルに関わる可能性が検討されています。 

CBDと不安の研究では、不安や恐怖を感じるときに働くさまざまな仕組みに、CBDがどのように関係するのかという視点から研究が進められています。

人前で話すときの不安にCBDを使った研究

CBDと不安のヒト研究としてよく知られているのが、人前でスピーチをする状況を利用した研究です。

2011年、ブラジル・サンパウロ大学などの研究グループは、社会的な場面で強い不安を感じる24人を対象に、CBDとプラセボを比較する二重盲検ランダム化試験を行いました。

12人にはCBD 600mg、もう12人にはプラセボをスピーチの90分前に投与しています。

その結果、CBDを摂取したグループでは、プラセボ群と比べて、スピーチによって生じる不安、認知的な不快感、話している最中の苦痛などが有意に低下しました。 

さらに研究では、不安を感じやすい参加者のCBD群と、同じスピーチ試験を行った健康な参加者を比較しています。

CBDを摂取したグループでは、一部の評価項目で健康な参加者との有意差がみられない状態まで反応が近づいていました。 

「不安」という目に見えない感覚を、実際に緊張が起こりやすい場面の中で調べた研究として興味深い結果です。

150mg・300mg・600mgを比べてみると?

では、CBDは量が多いほど不安への作用も大きくなるのでしょうか。

2019年には、ブラジルで健康な男性57人を対象に、CBDの量を比較する二重盲検試験が行われました。

参加者は、CBD 150mg、300mg、600mg、またはプラセボのいずれかを摂取し、その後、模擬スピーチ試験を行いました。

結果は少し興味深いものでした。

プラセボと比べてスピーチ中の不安が有意に低かったのは、CBD 300mgを摂取したグループでした。

150mgと600mgでは、プラセボとの間に同じような有意差は確認されませんでした。 

この研究では、CBDの量と不安への反応が単純な比例関係にはならず、研究者らは逆U字型の用量反応として報告しています。

「CBDなら量が多いほど変化も大きい」というわけではなく、どのくらいの量を使った研究なのかを見ることも、CBD研究を読み解くうえで面白いポイントです。

日本人を対象に4週間調べた研究も

日本人を対象にした研究もあります。

2019年、京都大学霊長類研究所の研究者によって、18〜19歳の日本人37人を対象とした二重盲検試験が報告されました。

参加者は、CBDを含む製剤を使用する17人と、プラセボを使用する20人に分けられ、CBD 300mgを1日1回、4週間使用しました。

不安の評価には、「他人から否定的に評価されることへの恐怖」を測定する尺度と、社会的な場面で感じる不安を評価する尺度が使われています。

その結果、4週間後にはCBDを使用したグループで、両方の尺度の不安スコアが有意に低下しました。

先ほどのスピーチ研究はCBDを一度だけ使用した試験でしたが、こちらでは毎日4週間使用しています。

178人を対象にした臨床試験では?

さらに2024年には、それまでの研究よりも規模の大きな臨床試験が発表されています。

インドの複数の医療施設で、軽度から中等度の不安がある178人を対象に行われた、第III相の二重盲検・無作為化・プラセボ対照試験です。

参加者はCBD群89人とプラセボ群89人に分けられ、CBD群では、CBDを1mLあたり150mg含むナノ分散型の経口液が使用されました。研究期間は15週間です。 

不安の評価には、GAD-7とHAM-Aという2種類の尺度が使われました。

その結果、治療前から治療終了時までの変化量を比較すると、CBD群ではプラセボ群より、GAD-7が7.02ポイント、HAM-Aが11.9ポイント大きく低下しました。いずれも統計学的に有意な差でした。

さらにこの研究では、睡眠の質を評価するPSQIなどの副次評価項目でも改善が報告されています。重篤な有害事象も報告されませんでした。

CBDと不安のヒト研究には比較的小規模なものも多い中で、178人を対象にCBDとプラセボを15週間比較したという点でも注目される研究です。

複数の研究をまとめると?

一つひとつの研究だけでなく、それまでに発表された研究をまとめて解析した論文もあります。

2024年に発表されたシステマティックレビュー・メタ解析では、1,550件の文献から条件を満たした8研究、合計316人のデータが解析されました。

その結果、CBDは全体として、不安を低下させる方向に統計学的に有意な効果を示しました。

効果量はHedges' g=−0.92、95%信頼区間は−1.80〜−0.04でした。 

この解析には、全般的な不安だけでなく、社会的な場面での不安など、さまざまな条件の研究が含まれています。

研究ごとに対象者やCBD量、使用期間が異なるため、著者らも今後さらに臨床試験を重ねる必要性を指摘しています。 

「CBDと不安」の研究を並べてみると

ここまで紹介した研究を並べてみると、同じ「CBDと不安」というテーマでも、さまざまな方法で研究が行われていることが分かります。

人前で話す直前にCBDを使用し、その場で起こる緊張を調べた研究。CBDの量を150mg、300mg、600mgと変えて比較した研究。日本人を対象に4週間継続した研究。そして178人を対象に15週間にわたってプラセボと比較した研究。

対象となる不安も、使用されたCBDの量も、使用する期間もそれぞれ異なります。

そして、こうした違いがあるからこそ、「どんな不安に、どのくらいのCBDを、どのような方法で、どのくらいの期間使ったのか」まで見ていくと、研究から見えてくることも変わってきます。

一度の使用で不安の変化が確認された研究もあれば、数週間の継続使用による変化が報告された研究もあります。さらに近年では、より多くの参加者を対象とした臨床試験や、それまでの研究をまとめたメタ解析も登場しています。

不安は私たちにとって、とても身近な心と体の反応です。

CBDがその仕組みにどのように関わるのか、そして研究条件の違いによってどのような結果が生まれるのか。

研究がさらに積み重なることで、CBDと不安の関係は、これからより具体的に見えてくることが期待されます。

参考・引用資料

[1]Blessing EM, et al. Cannabidiol as a Potential Treatment for Anxiety Disorders
PubMedで確認する

[2]Bergamaschi MM, et al. Cannabidiol reduces the anxiety induced by simulated public speaking in treatment-naïve social phobia patients
PubMedで確認する

[3]Linares IMP, et al. Cannabidiol presents an inverted U-shaped dose-response curve in a simulated public speaking test
PubMedで確認する

[4]Masataka N. Anxiolytic Effects of Repeated Cannabidiol Treatment in Teenagers With Social Anxiety Disorders
PubMedで確認する

[5]Gundugurti PR, et al. Evaluation of the efficacy, safety, and pharmacokinetics of nanodispersible cannabidiol oral solution (150 mg/mL) versus placebo in mild to moderate anxiety subjects: A double blind multicenter randomized clinical trial
PubMedで確認する

[6]Han K, et al. Therapeutic potential of cannabidiol (CBD) in anxiety disorders: A systematic review and meta-analysis
PubMedで確認する

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