CBDでハイになる? ― CBDとTHCの違いを知る

「CBDは大麻草に含まれる成分」と聞くと、
「大麻と同じなの?」
「使ったらハイになるの?」
「日本で使っても大丈夫?」
そんな疑問を持つ人もいるかもしれません。
大麻草にはさまざまな成分が含まれており、その中には「カンナビノイド」と呼ばれる成分があります。代表的なのが、CBD(カンナビジオール)とTHC(テトラヒドロカンナビノール)です。厚生労働省の資料でも、大麻草には100種類以上のカンナビノイドが含まれ、その代表例としてTHCとCBDが紹介されています。
同じ植物に含まれる成分ではありますが、CBDとTHCは体の中での働き方も、人が感じる作用も同じではありません。
さらに現在の日本では、CBD、THC、そしてCBNでも法律上の扱いが異なっています。
今回は、それぞれの違いを整理してみます。
「ハイ」になる作用に大きく関係するのはTHC
一般に大麻を使用した際の「ハイになる」「酔ったような感覚になる」といった作用に大きく関係しているのが、Δ9-THCです。
THCは、私たちの体に備わるECS(エンドカンナビノイドシステム)の中でも、脳に多く存在するCB1受容体を活性化します。
そのため、THCを摂取すると、気分や知覚、記憶、判断、反応時間などに変化が現れることがあります。2023年に『Neuron』に掲載されたレビューでも、THCとCBDは同じ大麻草からつくられ、化学構造も似ている一方、作用の仕組みや脳機能への影響は大きく異なると整理されています。
厚生労働省の検討資料でも、大麻の有害作用には主としてTHCが関係することが示されており、CBDについては幻覚作用を有しない成分として区別されています。
では、CBDでもハイになる?
CBDは、THCと同じカンナビノイドですが、THCのようにCB1受容体を強く活性化する成分ではありません。
実際に、CBDとTHCを同じ人で比較した研究があります。
2012年のランダム化・二重盲検・クロスオーバー試験では、健康な男性16人に、別々の日に
THC 10mg
CBD 600mg
プラセボ
を経口投与しました。
THCを摂取したときには、不安、不快感、精神病様症状、身体的・精神的な鎮静、主観的な酩酊感が増加し、心拍数も上昇しました。
一方、CBD 600mgでは、症状や生理学的な測定項目についてプラセボとの有意差は確認されませんでした。
CBDの量はTHCよりはるかに多い600mgでしたが、THCと同じような「ハイ」が起こったわけではありません。
つまり、CBDとTHCの違いは単純な「量」の問題ではなく、そもそも体内での働き方が違うのです。
CBDを800mgまで調べた研究も
2017年には、大麻を頻繁に使用している成人31人を対象に、CBD単独の作用を調べた研究も発表されています。
参加者にはCBD 200mg、400mg、800mgなどが経口投与され、「ハイに感じる」「薬物として心地よい」といった主観的な反応が評価されました。
THCを含む大麻では「ハイに感じる」などの評価が明確に上昇しましたが、CBD 200〜800mgでは、調べられたすべての乱用関連評価についてプラセボとの差がみられませんでした。
このようなヒト研究からも、CBDそのものをTHCと同じ「ハイになる成分」と考えるのは適切ではないことが分かります。
日本では何が規制されている?
ここからが、日本でCBDを理解するうえで重要なポイントです。
2024年12月12日、日本では大麻取締法および麻薬及び向精神薬取締法の改正法の一部が施行されました。
この改正によって、CBDなどの製品に残留するΔ9-THCについて具体的な残留限度値が設定されました。
現在の基準は、
油脂(常温で液体のもの)・粉末:10ppm
水溶液:0.1ppm
それ以外の製品:1ppm
です。
厚生労働省によると、この残留限度値を超えるΔ9-THCを含む製品は、麻薬及び向精神薬取締法上の「麻薬」に該当します。一方、Δ9-THCが残留限度値以下の製品は、このΔ9-THCを理由とする麻薬規制の対象にはなりません。
たとえばCBDオイルやCBDパウダーでは10ppm、水溶性の飲料などでは0.1ppm、菓子や錠剤、クリーム、バームなどでは1ppmが基準になります。
「大麻草のどこから作ったか」から「何が含まれているか」へ
以前の日本では、大麻草の成熟した茎や種子など、植物のどの部位から作られたのかがCBD製品の法的な扱いを考えるうえで重要なポイントでした。
しかし法改正によって、製品については成分に着目した規制へと大きく変わりました。
厚生労働省も、大麻規制について「部位規制から成分を原則とした規制に移行する」という方向性を説明しています。
つまり現在は、
「大麻草から作られたものだから全部同じ」
ではなく、
「実際にその製品には何が、どれくらい含まれているのか」
を見ることが重要になっています。
CBDそのものは麻薬成分ではない
ここも、THCとの違いを理解するときに重要です。
厚生労働省と愛知県が2026年4月に公表した資料では、国内でCBDを含むオイルや食品、化粧品などが流通していることを説明したうえで、CBDは麻薬成分ではないことが明記されています。
ただし、「CBD製品」と書かれていれば、どんな製品でも日本の基準を満たしているという意味ではありません。
実際、厚生労働省は市販のCBD関連製品を検査し、残留限度値を超えるΔ9-THCが確認された製品について、繰り返し注意喚起を行っています。 2025年だけでなく2026年にも公表例があります。
中には「broad spectrum」と表示されていた製品から残留限度値を超えるΔ9-THCが検出された例もあります。つまり、「アイソレート」「ブロードスペクトラム」といった商品上の呼び方だけで、日本の法律への適合性を判断できるわけではありません。
CBNは2026年6月から「指定薬物」に
そして、もうひとつ知っておきたいのがCBN(カンナビノール)です。
CBDやTHCと同じく、CBNもカンナビノイドのひとつです。
以前は日本でもCBNを配合した製品が販売されていましたが、現在は法律上の扱いが変わっています。
厚生労働省の薬事審議会では、CBNについて、精神毒性を有する蓋然性が高く、人の身体に使用した場合に保健衛生上の危害が発生するおそれがあると判断されました。
その結果、2026年6月1日からCBNは医薬品医療機器等法上の「指定薬物」に指定されています。
現在、CBNそのものやCBNを含む製品については、医療等の認められた用途を除き、製造、輸入、販売、所持、使用などが原則禁止されています。
CBD、THC、CBNは、すべて「カンナビノイド」という同じグループに入りますが、作用も、日本での法律上の位置づけも同じではありません。
CBD・THC・CBNは、それぞれ別に考える
「大麻」と聞くと、ひとつの作用を持ったもののように感じるかもしれません。
しかし実際には、大麻草の中には多くの成分が存在し、それぞれ性質が異なります。
THCは、いわゆる「ハイ」と呼ばれる酩酊作用に大きく関係する成分です。
一方、CBDはTHCと同じような「ハイ」を起こす成分ではなく、CBDそのものは日本で麻薬成分とはされていません。 ヒトを対象とした研究でも、CBDとTHCでは異なる反応が確認されています。
また日本では、CBD製品などに残留するΔ9-THCについて具体的な限度値が設けられており、その基準を超える製品は麻薬として規制されます。さらに、CBNは2026年6月から指定薬物となっています。
このように、同じカンナビノイドであっても、体への作用も、日本での法律上の扱いもそれぞれ異なります。
CBDを取り扱ううえでは、それぞれの成分の特徴と、現在の日本での位置づけを分けて理解しておくことが大切です。
参考・引用資料
[1]Stella N. THC and CBD: Similarities and differences between siblings. Neuron. 2023.
PubMedで確認する
[2]Martin-Santos R, et al. Acute effects of a single, oral dose of Δ9-tetrahydrocannabinol (THC) and cannabidiol (CBD) administration in healthy volunteers.
PubMedで確認する
[3]Babalonis S, et al. Oral cannabidiol does not produce a signal for abuse liability in frequent marijuana smokers.
PubMedで確認する
[4]厚生労働省「大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律」関連情報
厚生労働省で確認する
[5]厚生労働省「CBDオイル等のCBD関連製品の輸入について」
麻薬取締部で確認する
[6]厚生労働省「CBNの指定薬物の指定について」
厚生労働省で確認する
[7]厚生労働省「薬物乱用防止に関する情報/残留限度値を超えるΔ9-THCが検出された製品について」
厚生労働省で確認する
[8]厚生労働省
令和3年2月25日 第2回「大麻等の薬物対策のあり方検討会」議事録
大麻草には100種類以上のカンナビノイドが含まれ、THCやCBDがその一種であること、CBDは幻覚作用を有しないことが説明されています。
厚生労働省で確認する
[9]厚生労働省・愛知県
残留限度値を超える濃度の麻薬成分(Δ9-THC)が検出された製品について(2026年4月8日)
「CBDは麻薬成分ではありません」と明記されており、その一方でCBD関連製品にΔ9-THCが残留する場合があることが説明されています。
資料を確認する
[10]厚生労働省
残留限度値を超えるΔ9-THCが検出された製品に対する注意喚起について(2025年12月23日)
「AZALEA CBD WAX broad spectrum OG. KUSH CBD90%」など2製品から、残留限度値を超えるΔ9-THCが検出されたことが公表されています。本文の「broad spectrumと表示された製品でも基準超過例がある」という部分の直接的な根拠になります。
厚生労働省で確認する



